ANAL*HOLIC(痔の話)
痔の治療のため、入院することになった。
今、恐怖に震えながらこの文を書いている。脊椎に麻酔を打って、おしりを切るらしい。なんだそれ。考えただけで怖くて震えてくる。仕事は全く手につかない。仕事どころか、自分の好きなことにだって何一つ集中できない。ギターを弾いても、クルマに乗っても、山道具の手入れをしていても、頭の中は痔のことでいっぱいだ。
どうしてこんなことになったのか。
そいつは突然やってきたんだ。
痔関連のブログを読んでいると、「長年に渡り耐え続けてきたが限界になって病院へ」というパターンが目立つ。「肛門科に行く」ってすごい大変だよね。気が重いわな。「起業」と同じくらいの思い切りが必要なんじゃないだろうか。
おれの場合は事情が違った。ある日突然おしりが痛くなって、翌日速攻で肛門科の門を叩いた。逡巡するヒマさえないほどの痛みだった。なにしろ座れないし、歩くのも辛い。バイクなんて話にならない。生活への支障がありまくりだった。市販薬で何とかするのは無理だと思ったし、薬局に行って痔の薬を買うのも恥ずかしいわけで、どうせ恥ずかしさを味わうなら病院に行ってしまったほうが話が早いと思った。
当初こそ羞恥心を感じたものの、一度経験してしまうと考えは変わった。花も恥じらう乙女じゃあるまいし、病院の様子とか、はじめておしりを他人に見せるのが恥ずかしかったとか、そういう話をいちいち書くつもりはない。相手はプロで、彼ら/彼女らにとっては患者のおしりを見るなど、合コン相手の顔をチェックする程度のアレなんだろう。
簡ケツ(簡潔)にケツ論(結論)だけ書くと、初診の段階で応急的な手術をされ(これが人生で初めて味わうレベルの激痛だった)、そのおかげで今は落ち着いているけど、根本的な解ケツ(解決)のためには別の手術が必要、入院が避けられない、ということ。その事実はどうやったって動かせない。
怖い。
怖くて震えている。
おれに強さをくれ。
痔の手術に、術後の痛みに負けない心の強さを…。
ネ申よ…。
会社には洗いざらい全て話した。おれは会社では貴公子的なキャラで通っているので、もしかしたら泣き出す女の子とかもいるんじゃないかなって不安だったけど、おれは誰のものでもねぇし、おれの体はどうしようもなくおれ自身だけのものだから、そんなことは気にしなかった。
それよりも実務的な問題として、入院や診察で仕事を休むのは間違いないわけだから、下手に誤魔化すのは悪手だと思った。実際、すべて正直に話して良かったと思う。
しかしまぁ、痔だって言うとみんな笑うよな。老若男女問わず笑っとったわ。女の子も全然泣なかないね。笑顔。大変ですね~とか言いながら、全員笑ってるから。笑わないように堪えてる人もいたけど、堪えてるのがわかった時点で笑ってるのと一緒だもんな。
取引先の人で、どうしても話が合わない苦手な人がいる。その人と会うときはお互いに一切笑顔なんかないんだけど、このあいだ「申し訳ないんですが通院のために今日はここで失礼させていただきます」っつって、向こうが「具合悪いんですか?」って言ってきて、しょうがないから「大変お恥ずかしいんですが痔になってしまいまして…」って言ったとき、はじめてその人の笑顔を見たもんな。3年の付き合いで、今まで一切笑わなかったのに、そこで初めて満面の笑顔を見せたわ。まぁええんやけど。
もしかしたらこれを読んでいるおまえ、そこのおまえも笑ってるのかもな。
全然いいよ。
全然大丈夫だよ。
痔ってなんかおもしろいもんな。
ただひとつ、忘れて欲しくないことがある。
おしりはおまえと共にあるということ。
おしりは常におまえと共にあり、決して逃げることはできないということ。
誰もがおしりという名の刑務所の囚人なんだということ。
そして、嵐は突然にやってくるということ。
ご自愛ください。