ギターをめぐる葛藤のこと
アニメジャパンに行ったら、バンドリっていうソシャゲ?のキャラたちが使っている楽器が飾ってあった。
Cawaii。このモデルはストップテールピース仕様だが、ランダムスターといえばフリッカーやろがい!と思ってしまうメタルおじさんは多いはずだ。単なるモックかと思いきや、ダンカンのピックアップが載っていて、そのピックアップとエスカッションの間にスポンジが詰めてあったりして、しっかり実戦向けになっている。
ギタリストの中には、ESPというメーカーに対して複雑な感情を抱いている人も多いのではないだろうか?おれ自身がまさにそうだった。おれがギターに興味を持ち始めたころはビジュアル系全盛期、ビジュアル系の人たちはこぞってESPを使っていた(今もきっとそうだと思う)。
おれは兄貴の影響で早い時期からヴァン・ヘイレンやMR.BIG、オジー・オズボーンに夢中で、洋楽を聴く厨房にありがちな「洋楽>>越えられない壁>>邦楽」という凝り固まった考えに囚われ、更には「メタル>>何があっても絶対に越えられない壁>>ビジュアル系」と考えるようになっていた。そしていつしか、彼らが使っているESPの事を憎むようになっていた。
しかし、程なくしておれの中で激しい葛藤が生まれることになる。おれの好きなギタリストの中にもESPの使用者が結構いる、という現実に直面したからだ。ジェイムズ&カークのメタリカコンビを筆頭に、ジョージ・リンチ、イェスパー・ストロムブラードなどなど…。複雑な気持ちだったな。ギターって、そのギタリストの分身でもあり、ギタリストと同じか時にはそれ以上に憧れの対象になるから、あんたもESPなんかい!何でだよ!って思ったものだ。厨房~工房の頃の我がアイドルだったアレキシ・ライホなんかは、4thアルバムあたりからジャクソン(硬派なメタラー御用達のギターメーカー)からESPへと鞍替えして、この時の絶望たるや、密かに憧れてた女の子がヤリチンにかっさらわれてしまったような気分だったよ。あの時は荒らしたな〜、ESPスレ。ボケ、カス、あるいは馬鹿野郎なんて言ってね。
時は流れ、おれはギターよりもベースを弾くことの方が多くなり、そのせいか考えも軟化して、ESPに対する考え方が変わってきた。アレキシくんの件も、ジャクソンのギターが盗まれて困っていた所に助け船を出したのがESP、という事情があったそうだ。フットワークの軽い、アーティストに寄り添ったメーカーであることがわかる。ガキ臭い素人の発想でヤイノヤイノ言ってたおれがアホだったよ。楽器を選ぶっていうのは自分の哲学を具現化することであり、同時に人にはそれぞれの事情がある。運や縁ってのも絡んでくる。他人にアレコレ言われる筋合いはねぇよな。武士の世界では人の差料(刀)に文句をつけるのは最も卑しい行為のひとつとされていたそうで、つまりおれは武士の風上にも置けぬ愚か者だった。本当に申し訳ない。
ついでに言えば、音楽全体を俯瞰で見た際、ビジュアル系はメタルのサブジャンルの一つと言うことができるわけだし、たくさんのカッコいいビジュアル系バンドがいるのも事実(ヴェルサイユってのは特にイイと思う)。なまか同士仲良くやりましょう。手のひら返しみたいでゴメンやけど。スンマセン。
今後おれがESPの楽器を使うことがあるのかと言えば、正直なところ、きっとないだろう。しかしそれはそれとして、世界に誇るジャパニーズクラフトマンシップよ永遠なれ。
おれが現在も愛用するJAMES TYLERを模して自作したギター。おれは昔ギター職人になりたかったのだ(そして給料が低いと聞いて速攻であきらめたのだ)。
おわり。