ラージ記

   30代会社員。登山、バイク(W650)、クルマ(NA8C)、音楽、米国株投資のこと。

MT-09 トレーサー=最強バイク

以前ヤマハのMT-09に試乗した際、あまりの”暴れん坊ぶり”に度肝を抜かれました。オフロード車然としたポジションに前後17インチラジアルタイヤ。ハンドリングは軽快の一言で、幅広のハンドルのおかげで抑えが効き、思った通りに振り回すことができます。そういう意味ではモタードに近いです。
 
一番驚いたのが、エンジンのピックアップの鋭さでした。正直なところ「”トリプル”なんて言えば聞こえは良いけど、要するに軽自動車と同じじゃん」などと失礼なこと思っていたのですが、水冷三気筒という部分では同じでも、一般的な軽自動車とは明確に一線を画す、鋭い切れ味を持ったエンジンでした(制約の中で最上を目指す軽自動車開発の技術は本当に素晴らしいと思いますが、それはまた別の話とさせてください)。さすがヤマハ!GX750の再来だ!と感動しました(乗ったことないケド)。群馬サイクルスポーツセンターでの試乗会だったのですが、タイトコーナーが続くコースとの相性はバツグンで、非常に楽しかったのを覚えています。反面、あまりにもクイックな車体特性は体力の消耗が激しく、ロングツーリングには少々不向きかな、という印象もありました。
 
ヤマハはこの水冷三気筒エンジンとシャシーを基本プラットフォームとし、複数のバリエーションモデルを発売しています。その中で私が気になるのはMT-09 TRACERです。
 

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一見すると、流行のビッグオフっぽく見えます。しかし、タイヤを見れば完全なオンロードモデルであることがわかります。MT-09からの諸々の変更点は、不整地の走行を見据えてではなく、オンロードでの快適性向上のためのアップデートと見る方が正しいでしょう。個人的に特にイイナと思うのは、シート高を二段階に調整できる機構です。
 
日本人ライダーは足付き性を気にする人が多いようで、某B社などは日本仕様だけ異様にえぐれた珍妙なシートを装備しているケースが多いようです。足の短いライダーにとっては喜ばしいサービスかもしれませんが、標準的な体型の人間にとっては、本来開発陣が意図した重心バランスが崩れてしまっているわけで、とても歓迎できたものではありません。また、ステップ/ハンドルとのバランスが崩れたシートでは、場合によっては膝の曲がりがきつくなりすぎてしまいます。B社が標榜する長距離快適性がスポイルされる可能性があるということです。バイクはバランスで乗るものです。足を着きながら乗るものではありません。私は、バイクのシートというのはエンジン、ブレーキに次ぐ重要機能部品だと思っています。B社の場合、声の大きい一部の方々に迎合するだけでなく、自動車のように購入時にシートを選べるようにする、選択肢を提示するというのが誠意だと思います。高級路線で売るなら尚更です。
 
…話がそれました。TRACERの場合、ここを調整可能とした点に技術者の意地とコダワリを感じます。トラクションコントロールや走行モード切り替えシステム、スリッパークラッチ等の華やかな装備に比べれば地味ですが、とても大事な部分です。大丈夫な人はしっかりアレして軽快感を楽しんでね、という強いメッセージ。機構そのものと同じくらい、このメッセージが嬉しい。本気度が伺えます(同様の機構を備えているスズキのV-STROMも、車両の方向性は違いますが個人的にとても好きなバイクです)。
 
サスペンションやエンジンはマイルドな方向にチューニングされているとのことですが、その素性の良さはMT-09で保証済みです。加えて、スクリーン、ハンドガード、パニア装着可能なキャリアなど、MT-09にはない快適装備の数々は非常に魅力的です。週末の空いた時間に近所の散歩をしてもエキサイティングで楽しいでしょうし、荷物満載で出掛ける大冒険では頼もしい相棒になってくれるでしょう。欲張りな一台です。タイヤはミシュランのPOWER3にしましょうか。TRACERの性格に合ったタイヤだと思います。あえてオフメット+ゴーグルで乗ったら素敵です。
 
すごく乗りたいですが、私は既に大切なバイクを持っています。ここは「諦める」と考えると悲しくなってくるので、「並行世界ではきっと私の愛車になってもらおう」と思うことで、なんとか自分を納得させようと思います。
 
おわり