ラージ記

   30代会社員。登山、バイク(W650)、クルマ(NA8C)、音楽、米国株投資のこと。

最近の山

6/25~26 農鳥岳

登山口である奈良田から農鳥岳への登りは標高差約2200m、甲斐駒ヶ岳・黒戸尾根を越える長大で厳しいルートとなる。農鳥岳単独で登られることは少なく、大門沢沿いのルートはもっぱら北岳間ノ岳からの下りで使われるようだ。

昨年2回登った黒戸尾根は思ったよりあっさり登れてしまったので、それを越える場所に挑戦してみたいという思いを以前から持っていた。

 

また、農鳥岳間ノ岳の鞍部に位置する農鳥小屋には通称「農鳥オヤジ」と呼ばれる名物オヤジがいて、これがなかなかパンチの効いた人物であるらしい。口が悪く、気に入らない登山者は平気で怒鳴りつける、と。ホンマかいな。

また、農鳥小屋それ自体も野性味溢れる施設となっているようで、その点にも興味があった。

農鳥オヤジは結構な歳であるらしく、いよいよ引退かと囁かれている。チャンスを逃すと二度と会えなくなってしまうかもしれない。

 

そういうわけで農鳥岳に登ってきたのだった。

 

山ごとに登山道の雰囲気は異なるもので、八ヶ岳北アルプスのメジャールートには「こんにちは、ようこそいらっしゃいました」というような、おもてなしの空気感が漂っているように思う。厄介な箇所には真新しい鎖やロープ、梯子がしっかりと設置されていて、悪い言い方をすれば「山をモチーフにしたテーマパーク的」と言えなくもない。

一方今回のルート、人の往来は決して少なくないはずなのだけど、設置された橋や梯子の類がどれもワイルドで「いらっしゃいませ感」はなく、「まぁこれ使ってくれや」というようなメッセージが発せられているように感じた。これも農鳥岳の味ということで、楽しみながら登ることができた。

奈良田からの登りは噂に違わぬ長さ厳しさで、特に大門沢小屋から稜線に出るまでの標高差1100mは無限にも思えた。軽量化を意識して装備を選んだが、この時期の農鳥小屋には水がない可能性が高いと聞いたため水を3ℓほど余分に背負っており、情けない話だがザックの重さが堪えた。黒戸尾根を割とあっさり目にクリアできたのは、自分に体力があるからではなく、途中の七丈小屋にテントや寝袋を置いて身軽に山頂まで行けたからに他ならないと痛感したのだった。情けねぇ。

 

農鳥オヤジとの邂逅が目的の一つではあったけれど、実際のところ農鳥小屋の営業は7/1からで、会えるかどうかわからなかった。その場合はテント場だけ拝借しようと思っていたのだけど、今回幸運にも会って話すことができた。

オヤジさんは耳が遠いため声が大きく、ぶっきらぼうな印象は確かにあるのだが、それはきっと氏のシャイな性格からくるもので、おれは登山者思いのオヤジさんだなと感じた。「小屋の到着が遅くなると怒鳴られる」というのは登山者の身を案じているからこそだろう。

小屋開けの準備で忙しい中、「天気が荒れるかもしれない、テントが無理そうなら小屋で寝ていいから」と心配してくださって有難かった。

 

初日は農鳥岳の稜線から塩見岳鳳凰三山、そして富士山が綺麗に見られたが、その後天候は大いに荒れて、激しい風雨が翌朝まで断続的に続いた。

帰り道は膝が笑ってしまい、なんとか奈良田駐車場まで辿り着いた。ここ最近トレーニングをサボっており、力不足を感じる山行になったが、どれも良い経験で忘れ難い山になった。

<学んだこと>

・風速15m以上の風が一晩中続いた。「ウトウトした頃に強風でテントが揺れ、壁についた結露が顔に降りかかって目が覚める」というのが続き苦しんだ。苦行。多少の寒さよりテント内の換気を優先して出入り口を開放状態にしておくと結露は消え、なんとか眠ることができた。工夫は大事。

・↑に関連して、自分が使っているのはプロモンテのVB-10という前室なしのシングルウォールテントだけど、テントに細工をして換気しやすくしておくと対応力が高まって良い(詳細→プロモンテ「VBシリーズ」の㊙環境UP術① – DENALI BLOG)。

・満足に寝れなくても、じっとして目を閉じていれば体力は回復するもので、翌日は普通に体が動いた。だから山で寝られなくても焦ることはない。

・「山に登ることが一番のトレーニング」とよく言われるし、実際その通りだと思うけど、日頃からのトレーニングは超重要だと再認識。毎週行けるわけじゃないからなぁ。

有酸素運動はもちろんパワーリフティング系の種目も欠かすべきではないと感じた(最近サボっていたので下りで大腿四頭筋が力尽きた)。1セット20回程度の負荷でセット数を多くするのが登山向きなのではないか。何より山行中に「あれだけやってきたから大丈夫」と自信を持てないと途中で心が折れて、山がつまらなくなってしまう。

・新しく買ったゴアテックスシュラフカバーは抜群の透湿性能で、今まで悩まされたカバー内部の結露が極めて少ない。これは良い買い物をした(製品名:イスカ ゴアテックスインフィニアムシュラフカバー ワイド)。