ラージ記

   30代会社員。登山、バイク(W650)、クルマ(NA8C)、音楽、米国株投資のこと。

肛門に違和感をおぼえたら、すぐに医者にみせろ。

一年前の今日、おれは痔瘻の手術を受けました。
 
このブログを読んでる人、もしお尻に違和感を感じたら即座に肛門科の門を叩いてください。時間がないとか恥ずかしいとか言ってる場合じゃないです。
 
即、受診せよ。
 
初期段階で食い止めることができれば、大掛かりな手術も、それに伴う入院も必要なくなる場合が多いようです。苦しむ人が減って欲しいから言っているんです。
 
手術は辛いです。
 
手術の二日前から入院して、前日の夕食は重湯とみそ汁(具なし)のみ。「切腹前の武士ってこういう物を食べたのかなぁ?」などと考えてしまいます。幅80㎝ほどの驚異的に狭いベッドで、同室のオジサンのイビキに苦しみながら、ほとんど眠れないまま朝を迎えます。
 
手術当日、病室でベッドに寝た状態のまま、ベッドごと手術室に運ばれます。ガラガラと運ばれながら廊下の天井を流れていく蛍光灯なんかを眺めていると、「あぁ、いよいよ死ぬんだな」と思えてきます。
 
恐ろしかったのは麻酔を打つ瞬間です。看護婦さん3人がかりでおれの体をガッチリ体を固定し、腰骨の骨と骨の隙間に注射をブチ込みます。ここで反射的にのけぞったりするとやり直し。もう一度、恐怖と鋭い痛みに耐えねばならない。
 
手術中は看護婦さんが頻繁に話しかけてきます。趣味は?学生時代の部活動は?など。おれは格好をつけるために「パワーリフティングをやってました」と嘘をつきました。アナルを切り開かれてるヤツがカッコつけてもしょうがないんだけど、なんというか、「おれは屈強な男なんだ、こんな手術怖くないんだ」ということをどこかでアピールしたかったのかもしれません。あるいは自分に言い聞かせたかったのか。とにかく咄嗟に出た嘘でした。看護師さんは「逞しい身体だと思ったのよ」「立派な太ももよ」などと言ってくれました。彼女たちもまた嘘をついてくれたんだと思います。彼女たちはおれのバックグラウンドに興味があるわけではありません。会話を継続させることで、患者の意識が落ちてないか確認するために訊いているわけです。
 
手術室内にはユーミンの『春よ、来い』がリピート再生されていました。ユーミンと「ピコン、ピコン」という電子音(おれの血圧?脈拍?が正常かを計測してる機械の音)が絶妙にコラボして、不気味な音像でした。
 
手術が終わると、T字帯とかいう紙でできた”ふんどし”みたいなものを履かされベッドに戻されて、ベッドごとガラガラと病室に戻されます。
 
おれの隣のベッドには30代後半くらいのお兄さんが入院してたんですが、おれがベッドごと帰還した時にちょうど彼の奥さんが見舞いに来てました。彼はおれの一日遅れで入院、つまり明日手術というわけです。彼の奥さんは手術を終えたおれの姿に旦那さんを重ねたのでしょう、おれを見るなり泣き始めました。
 
おれは手術を終えて病室に戻った時、「これで7割がた終わった」と思いました。手術という大きなヤマを越えて、あとは大したことない、治るのを待つだけだと。
 
手術を終え数時間経ち、麻酔が切れてくると、その考えはまるで間違っていたことがわかりました。本当の地獄はここからだった。書くのがめんどくなってきたのでもうやめますが辛かったです。辛くて情けない気持ちになった。
 
早期の受診をすれば、手術もその後の地獄も味わわなくてよいかもしれない。
 
受診せよ。
 
そしてハッピーハロウィンです。