ラージ記

   30代会社員。登山、バイク(W650)、クルマ(NA8C)、音楽、米国株投資のこと。

軽量化とザックの話

「ぜつえんアウトドア」さんの記事が素晴らしかった。

www.zetuenlife.com

 

自分の場合、山を始めた当初が一番軽量化に熱心で、経験を重ねるごとに荷物の重さは増してきている。理由はいくつかあるけど、「歩行時の軽快感」より「旅全体における総合的な快適性」を上げた方が、トータルで満足度が高いと気づいたってのが大きい。

 

歩くことは登山の一側面に過ぎない。山の中では歩くこと以外にもやらなければいけないことがたくさんある。軽さと歩く事だけにフォーカスするのではなく、入山から下山までの快適性を総合的に考えた時に、最適解はどこになるのか?という視点が必要だと思う。

 

また、自分は山にいる間、できるだけ他人の世話にならず自分で旅を完結させたいと思っている。多少の雨でも山に行きたいし、コンディションが悪くなっても可能な限り小屋にエスケープすることなくテントで夜を明かして下山したい。そうなると軽量なツェルトやフロアレスシェルターじゃなくて、多少重くとも堅牢なドーム型のテントの方が「悪天候への耐性」という面で都合が良い。もちろんドーム型のテントでもダメな時はダメなんだけど、可能な限り環境適応力の閾値を上げておきたい。

 

そもそも登山家が軽量化に苦心するのは、目的の山行を成功させるための手段として、軽くなければ危ういから、軽量化することで成功率を上げられるからそうするのであって、自分のように一般登山道を歩いて、頑張ってもせいぜい10時間までの行動で、幕営指定地に寝起きするのであれば、クライマーや高所登山家のような極めてシビアな軽量化は必要ないと思っている。

 

とはいえ、荷物が軽いことはリスク軽減に繋がる。同じ機能を持つ道具なら重いより軽い方が良いに決まっている。自分がやる山全体を俯瞰しながら、自分にとってバランスが良いと思う装備を見つけていくのが重要なんじゃないだろうか。

 

以下、おれが愛用するちょっと重めのザックについて。

 

グレゴリー バルトロ65

登山を始めた当初、35ℓ程度のザックでテント泊を行っていた。シンプルで小型軽量なザックこそ正義じゃいと。しかし経験を重ねる中で「機能充実、しかしデカくて重いザック」にもメリットがあると感じるようになってきた。

f:id:largesan:20210524130349j:plain

良いところ① 充実の便利機能

使いやすい所にポケットがついていたり、ザックを背負ったままボトルが取り出せたり、サブザックが内蔵されていたりと、機能が非常に充実している。これらの機能に頼ることで「自分で判断しなければいけない事柄」が減っていく。行動中に「A」という小さな悩み事が出てきた時に、それに対応する「A´」という便利機能が予め用意されている。

 

登山は判断ゲーである。どの山に何月何日に登るのかというマクロ的な意味でもそうだし、雨がパラついてきたけどカッパを着るか着ないか、ザックを降ろすか降ろさないかといったミクロ的な意味でも判断の連続である。そして、判断を繰り返すことで体力・精神力は削られていく。

 

装備の便利機能に頼ることで、小さな判断事項をパスすることができるというのは大きなメリットだと思う。玄人がシンプルな装備を好むのは、判断すべき事象とその解を自分の中で網羅的にデータベース化できていて、ルーチンとして適切に処理できるからだろう。要するに装備に頼る必要がない。自分のような初心者は、装備に頼れる所は頼って、もっと大事な、例えば「目の前の難路をどのように通過すれば良いか」といった安全に直結するような判断のために力を温存しておきたい。そのためなら多少重くてもOKと考えるようになった。

 

ごちゃごちゃ語ってっけど、要するに「何も考えずに便利に使える」ということ。

 

良い所② 負荷が掛かるのは脚だけ

ザック単体で2㎏以上ある。ウルトラライト派の人からすれば考えられない重さだろう。しかしバルトロは背負い心地に優れ、肩/背中/腰への負担が極めて少ない。負荷が掛かるのはほぼ脚だけだから、普段のトレーニングで下半身を重点的に鍛えれば、山行自体が快適になる。サポートの弱いザックは鍛えようのない個所が痛くなってきたりするもので、そうなると苦痛に耐える他ない。補強すべき個所が明確になるのはありがたい機能のひとつだと思う。

 

ウルトラライト派の人を批判したいわけでは全くないのだけど、例えば「荷物が重くて大変だった」という経験をした時に、その解決策を荷物の軽量化だけに求めるのではなくて、「どういうトレーニングをすれば楽になるか」「どこを鍛えれば今より強くなるか」についても考えて並行して取り組めば、軽量化との相乗効果で次の登山がめちゃめちゃ進歩するし、準備の過程もより楽しくなると思う。

 

しかし物欲は続く

…しかしながらカッコいい軽量ザックへの物欲も常に持ち合わせていて、最近だとハイパーライトマウンテンギアっていうのが良いなと思っている(高くて買えないケド…)。

 

道具集めも登山の楽しみの一つだ。